PSL服用時の運動療法の重要性
2026/05/08
PSL服用時の運動療法の重要性|なぜ“安静だけ”では身体機能は守れないのか?
監修・著者
https://personalgymshinsaibashi.jp/
前回記事:筋肉量と歩行能力の関係とは?
こんにちは!
パーソナルジム心斎橋 理学療法士の志戸岡 大起です☺️
「プレドニン飲み始めてから筋力が落ちた気がする…」
「リハビリした方がいいと言われたけど、本当に運動して大丈夫なの?」
こうした悩みは、プレドニゾロン(PSL)を服用している方から非常によく聞かれます。
PSLは膠原病、間質性肺炎、自己免疫疾患、神経疾患、整形外科疾患など、さまざまな病気で使用される非常に重要な薬剤です。
炎症を抑える力が強く、命を救うこともある薬です。
しかしその一方で、長期服用によって筋力低下、骨粗鬆症、体脂肪増加、血糖上昇、易疲労感など、多くの副作用が起こることも知られています。
特にリハビリ領域で問題になるのが、“ステロイドミオパチー”です。
これはPSLなどのステロイド薬によって筋肉が萎縮し、筋力低下が起こる状態です。
つまり病気そのものだけではなく、“薬によって身体機能が低下する”ことがあるのです。
ここで非常に重要になってくるのが、運動療法です。
今回は理学療法士の視点から、「なぜPSL服用時に運動療法が重要なのか?」について、エビデンスを交えながら解説していきます。
⭐️PSLは非常に強力な抗炎症薬
炎症を抑える作用が強いため、関節炎や自己免疫疾患などでは劇的に症状が改善することがあります。
「昨日まで動けなかったのに、PSLを飲んだら急に楽になった」
こうしたケースは実際によくあります。
しかし身体の中では、その代償として筋肉分解が進む可能性があります。
PSLは糖新生を促進します。
これは身体がエネルギーを作り出そうとする反応です。
その際、筋タンパクを分解してアミノ酸を取り出し、肝臓で糖へ変換する作用が起こります。
つまり身体は、“筋肉を削ってエネルギーを作る”方向へ傾くのです。
特に大腿四頭筋や臀筋などの抗重力筋は影響を受けやすく、立ち上がりや歩行能力が低下しやすくなります。
患者さんによっては、
「階段が急にしんどくなった」
「立ち上がりで膝がガクっとする」
「歩くとすぐ疲れる」
といった症状が出現します。
これは単なる体力低下ではなく、筋肉そのものが萎縮している可能性があるのです。
さらに怖いのは、PSLによる筋力低下は“痛みを伴わず進行すること”です。
つまり気づいた時にはかなり筋力が落ちているケースも少なくありません。
⭐️「安静にした方がいいのでは?」という考え
もちろん病状が不安定な時期や急性増悪時には安静が必要なケースもあります。
しかし長期的には、“過度な安静”がさらに身体機能を低下させる可能性があります。
人間の身体は、使わないと急速に衰えます。
これはPSLを飲んでいなくても同じです。
実際、ベッド上安静では数日単位で筋力低下が始まることが分かっています。
さらにPSL服用中では、そこに“筋分解促進”が加わるため、より筋萎縮が進みやすくなるのです。
つまり、「病気+安静+PSL」の組み合わせは、身体機能低下のリスクが非常に高いのです。
だからこそ運動療法が重要になります。
ここでいう運動療法とは、単なる筋トレだけではありません。
呼吸機能、関節可動域、姿勢、バランス能力、持久力など、身体機能全体を維持・改善するための医学的アプローチです。
特に理学療法士が重要視するのは、“日常生活動作を守ること”です。
歩く、立つ、階段を上がる、トイレへ行く、買い物へ行く。
こうした日常動作を維持することは、生活の質そのものに直結します。
筋力低下が進むと、活動量が減ります。
するとさらに筋力が低下します。
さらに活動量低下は、血流低下や心肺機能低下にも繋がります。
つまり身体がどんどん“省エネモード”になってしまうのです。
⭐️PSL服用時の骨粗鬆症リスク
ステロイドは骨形成を抑制し、骨吸収を促進します。
つまり骨が弱くなりやすいのです。
ここで重要になるのが、“骨への適切な刺激”です。
骨は負荷刺激によって強くなります。
歩行や軽いレジスタンストレーニングなどの荷重刺激が、骨密度維持に重要とされています。
逆に完全安静では、骨密度低下が進行しやすくなります。
つまり「動かない方が安全」と思っていても、長期的には骨折リスクを高める可能性があるのです。
特に高齢者では、転倒→骨折→活動量低下→寝たきり、という流れが非常に問題になります。
だからこそ、“安全に動く”ことが重要なのです。
ここで理学療法士の役割が大きくなります。
病状、筋力、呼吸状態、血圧、疲労感などを評価しながら、その人に合った運動負荷を調整していきます。
PSL服用中は、過度な高強度運動が逆効果になるケースもあります。
例えば強い炎症状態なのに無理をすると、疲労増悪や免疫バランス悪化に繋がる可能性があります。
つまり“頑張ればいい”わけではありません。
適切な強度設定が必要なのです。
実際の臨床では、
「軽いスクワットから始める」
「呼吸訓練を併用する」
「短時間歩行を反復する」
など、小さな積み重ねが非常に重要になります。
⭐️“心理面”
PSL服用中は、ムーンフェイスや体脂肪増加などの見た目変化に悩む方も少なくありません。
さらに筋力低下や疲労感によって、自信を失ってしまうケースもあります。
ここで運動療法には、“身体だけでなく精神面を支える役割”もあります。
実際、適度な運動はセロトニンやBDNFなどにも関与し、気分改善効果が期待されています。
つまり運動療法とは、“身体を鍛えるだけ”ではないのです。
「また歩けるようになった」
「階段が少し楽になった」
「前より疲れにくくなった」
こうした小さな成功体験が、回復意欲にも繋がっていきます。
⭐️膠原病や慢性疾患領域の、「適切な運動療法の重要性」
昔は“とにかく安静”が重視される時代もありました。
しかし現在では、“安全に活動量を維持すること”の重要性がエビデンスとして示されています。
もちろん病態によって注意点は異なります。
呼吸状態、関節炎の程度、感染リスク、骨密度、血糖管理など、多角的評価が必要です。
だからこそ、自己流ではなく専門職による評価が重要になります。
特にPSL服用中は、“無理をしないこと”と“動かなさすぎないこと”のバランスが非常に重要なのです。
このバランスを適切に取れると、身体機能低下を最小限に抑えながら生活の質を維持できる可能性があります。
リハビリとは、“失った機能を戻す”だけではありません。
“今ある機能を守る”ことも、非常に大切な役割なのです。
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