長期ステロイド投与による筋力低下
2026/01/22
「ステロイドを飲んでいるんだけど、筋力が落ちてきた」
「階段の昇り降りがしんどい…筋トレしても効果が出にくい気がする…」
こうした悩みを持つ方は多いはずです。
ステロイド(グルココルチコイド)は炎症や免疫反応を抑える強力な薬剤で、喘息・関節リウマチ・膠原病などで長期投与されることがあります。
ただし、持続的なステロイド投与は筋力低下や筋萎縮(筋肉が細くなること)を引き起こす「ステロイド誘発性ミオパチー」と呼ばれる状態を誘発するリスクがあり、体づくりや日常動作にも影響します。
① ステロイド誘発性ミオパチーとは?
ステロイド誘発性ミオパチー(corticosteroid-induced myopathy)は、ステロイド薬の副作用として生じる筋疾患のひとつで、特に長期または高用量のステロイド使用で発症しやすいと報告されています。
特徴としては、
✔ 筋肉の萎縮
✔ 主に膝・股関節・肩まわりの筋力低下
✔ 立ち上がり・歩行・階段昇降の機能低下
などが挙げられ、痛みがなくても筋力が落ちるため「老化の影響」と誤解されることがあります。
ステロイド誘発性ミオパチーは炎症性の筋疾患とは異なり、炎症ではなく薬剤そのものの影響で筋肉が弱くなることが特徴です。
② どのように筋肉が弱くなるのか?
ステロイドは炎症抑制作用のほか、体内の筋たんぱく質代謝にも影響します。
具体的には、
✔ 筋たんぱく質分解の促進
✔ タンパク合成の阻害
✔ 筋細胞内シグナルの変調
といった作用で、筋量と筋力が減少します。
また、ステロイドは速筋線維(type II)に対して特に影響が大きいとされており、日常の立ち上がりや歩行のような機能にも直結します。
③ 長期ステロイド投与と筋力・機能低下の研究
臨床研究でも、長期ステロイド使用者は筋力が減少しやすい傾向が確認されています。
たとえば、慢性呼吸器疾患患者を対象とした研究では、ステロイド使用群で大腿四頭筋(太もも前)の筋力が対照群に比べて有意に低下し、投与総量と筋力低下には逆相関が認められました。
ステロイド誘発性ミオパチーは、持続的な使用や高用量ほどリスクが高く、早ければ数週間で筋力低下が現れることもあるという報告もあり、注意が必要です。
④ 筋力低下が日常生活に与える影響
ステロイド関連の筋力低下は一般の「だるさ」とは異なり、以下のような日常動作に影響することがあります。
・立ち上がりが困難
・歩行速度が低下
・階段の昇降が不安
・肩の挙上が難しい
これらは身体機能全体の低下につながり、転倒や生活の質低下のリスクを高めます。
⑤ 運動療法は予防・改善に寄与する
ステロイド誘発性筋力低下に対し、運動療法(特にレジスタンストレーニング) が有効です。
理学療法ガイドラインでは、抵抗運動や有酸素運動は筋萎縮の進行を遅らせたり、筋力低下を軽減する可能性があるとされています。
動物モデルの研究でも、トレッドミル運動がステロイド誘発性筋萎縮を予防したという報告があり、機械的負荷(運動)は筋タンパク質分解を抑制し、合成を促進する可能性が示されています。
また、理学療法的な運動は筋力だけでなく、バランス・姿勢・日常生活動作の改善にも寄与するとされ、リハビリ戦略として重要です。
⑥ 運動療法の実際(リハビリ設計)
ステロイド関連の筋力低下に対しては、理学療法士による負荷調整された運動プログラムが効果的です:
📌 1. 抵抗運動(レジスタンストレーニング)
筋繊維に負荷をかけることで、筋量維持・増加を狙う(例:軽負荷で反復回数を増やす、徐々に負荷アップ)
📌 2. 有酸素運動
心肺機能維持と運動耐容能の向上に寄与
📌 3. 機能的動作練習
立ち上がり・階段動作・歩行など、生活動作の向上を促す
📌 4. ストレッチ・柔軟性訓練
筋肉の柔軟性を維持し、怪我予防にも役立つ
まとめ|長期ステロイド投与と筋力低下
✔ 長期ステロイド投与はステロイド誘発性ミオパチーを引き起こし、筋力低下や筋萎縮を起こす可能性がある。
✔ 特に膝・股関節・肩周囲の筋力低下がみられ、日常動作の障害につながることがある。
✔ 運動療法(抵抗運動・有酸素運動)は予防・改善に寄与する可能性がある。
✔ 適切なリハビリ設計で筋肉量・機能を守り、生活の質を維持することが重要。
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